はじめに
この記事は FMC Advent Calendar 2023 の4日目の記事です。
昨日はkits_さんによるFMC Advent Calendar 2023 (1) 思考過程でした。
明日は凛さんのRZPは5手以内です。
初めまして。ブログ初投稿のShotaと申します。BLDとFMCを主に専攻しています。(BLDはほぼ休学中ですが……)
今日はFMC Advent Calendar 2023のscramble (1)を解いて、思考過程をまとめてみます。
結果
まずは結果から。最近*1はover25も多かったので、かなり上手くいった方です。
solution: R2 D F L U R2 U2 D2 R' U R B2 L2 D2 F2 U F2 D' F2 R2 B (21 moves)
注意事項
私のFMCの記事では、幾つか独自の(一般的でない)記号を用います。予めご了承ください。
※X, Yは任意の回転記号
※EOやDR, HTRトリガーの最後の1手は基本的にX, X'の両方考えられますが、書き出す際はX*を省略してXと書いています
思考過程
全体の流れ
解法はDRを用います。基本的なタイムスケジュールは以下の通りです。
理想はこの通りに進めることですが、全く良いものが見つからなかったり、他に良いものが見つかる見込みがある場合は、各ステップ締め切りを5分程度延長します。
逆に、早々に良いものが見つかりこれ以上探索しても改善の見込みが無い場合は、その時点で切り上げてoptimal finishに全力を注いだり、早めに解答を完成させた後にまた戻ってくることもあります。
EO
まずキューブを2つ使ってノーマルとインバースのスクランブルをし、EOを書き出します。基本的には4手以下のEOのみです。
DR
NISS無しの4手EOから順に、さっそくDRを探していきます。
①: (R B2 L F2 U2 R' U(w)2 L2 F) // DR 2c3 (9/13)
②: (R B2 L F2 R' L F2 L F) // DR 2c3 (9/13)
③: U2 D2 R L' # D2 L B // DR 2c3 (7/11)
既にDR-4e4cになっているため、素直にDRを作ります。③は私が採用基準の1つにしている、「『DRまでの手数+DR後コーナーを揃えるのに必要な90°回転の数』(以下DQ)が14以下である」を満たすため、他になければ採用する可能性が高いです。
なお、③の # にはM2を+0手でインサートすることも可能ですが、HTR的に同等なエッジ(HTR後に同スライス上に来るエッジ)が交換するだけなので、試すとしてもHTRを作った後になります。
他の+2手以下のRZPも見ましたが短いDRを作れそうなものが見当たらないため、次のEOへ。
U L U D' L2 B2 R // DR 2c4 (7/11)
あまり良いのが見つかりませんでした。インバースのRZPを探す前に、途中まで一致しているもう一つの4手EOを探索します。
⑤: L' D' U2 L2 F2 L' U // DR 4a3 (7/11)
⑥: L U R2 U2 D2 R' U R // DR 4b2 (8/12), 4b4 (9/13)
⑦: L (U2 R2 U2 L' D' L) // DR 4a3 (7/11)
⑧: L (B(w)2 R2 U' L2 D2 R' D' R) // DR 4a4 (9-1/12)
色々と見つかりました。特にDR-2e3cは簡単なセットアップが見つかりやすいので、無条件でRZP後のスイッチも試みるようにしています。
前述の条件、DQ ≦14を満たすDRが新たに3つ見つかりました。ここで2つ目の条件「DQが等しければQTの値が少ないものを優先する*4」により、2QTである⑥が第一候補になります。
続いてこれらのNISS EOのインバース側を探索します。
……が良さげなRZPは見つからず。この辺りで30分目前でした。一応30分になるまでは申し訳程度に書いておいた5手EOも探索します。
R B2 U' F2 U D2 L // DR 2c4 (7/12)
⑩: D' F D2 L' B' // EO
R D' L2 U' D L2 U' R // DR 2c4 (8/13)
⑪: D' F L' D2 B' // EO
L (F2 U* F2 B2 R(w)2 D2 L) // DR 2c3, 2c3*5 (8/13)
HTR~Leave Slice
ここからは50分くらいまでひたすらHTRを作ります。ただし、ブロックが多くHTRから容易に良さげなスケルトンを作れそうだったらその場でスケルトンを作り、それが2e(+E slice), 3e, 2e2eであれば簡単にインサートしてスライス残しまで作ります。
以下DR⑥後、
➋: (R2 L2 U' F2 D) // HTR (5/17)
(R2 D2 ^ L2) // 2e2e3E (3/20)
^ = D2 B2 L2 B2 D2 L2 B2 L2 // 3E (8-4/24)
既にDR時点でHTR-6e4cになっているので、ノーマル・インバース両方で適当にセットアップして3手トリガーに持ち込み、まずHTR2個完成です。
➋は良い感じにブロックがあるので適当にLeave Sliceまで終わらせて保険加入します。
それでは別のHTRを色々試していきます。まずは初見で良いのが作れなかったノーマルから。
➍: U2 B2 L2 F2 B2 U' L2 D // HTR (8/20)
F2 D2 L2 F2 U2 R2 // 3e3E (6/26)
既に24手の保険があるため、それを超えた/超えそうなものは容赦なく捨てていきます。
似たような手数のHTRばかり見つかってつまらないので、一旦インバースに移ります。
(実は➌と➎は L2 と F2 R2 L2 B2 という可換な2手順を交換しただけの全く同じHTRですが、この時は気付いていませんでした。)
(R2 F2 D2 ^ ) // 2e4E (3/20)
^ = D2 F2 U2 F2 D2 B2 // E-slice (6-4/22)
➋と同じ17手でこれまた良い雰囲気のHTRができました。スケルトン後そのまま6手2e2e手順をすると22手のスライス残しです。
この辺で50分を過ぎたので、採用するスケルトンはこれに決定し、ちゃんと遡って別のインサートも探します。すると……
L U R2 U2 D2 R' U R // DR (8/12)
(B2 R2 F2 U L2 D) // HTR (6-1/17)
(@ R2 F2 D2) // 2e4E (3/20)
@ = D2 B2 U2 L2 B2 D2 F2 R2 // E-slice (8-7/21)
なんと8-7手!! 実はさっきのスケルトン直後の時点で
Slice Insertion
最後にサクッとスライスインサートをして解答を完成させます。ただし、もしこのとき+2手以上かかる場合は、先の22手の方で+0手が無いかどうか確認しないといけないのでまだ安心はできません。
さて、ここまでの解答をノーマルで書き下し、スライスインサートを挿れたいところだけ書き抜くと、
ここでは詳しいやり方は省きます*6が、U' から外側を回し、U2まで戻ってくるとE層が既に揃っています。従ってB2とL2の間にはEを挿れる必要があることが分かり、他のU/D回転の様子を見てみると、0手インサートになることが自明に分かります。超ラッキーですね。
# = w // finish (0/21)
以上で解答は完成です。まとめて清書すると以下のようになります。
L // DR-2e3c (1/5)
U R2 U2 D2 R' U R // DR 4b2 (7/12)
(R2 F2 U # L2 D #) // HTR (5/17)
(@ R2 F2 D2) // 2e4E (3/20)
@ = D2 # B2 U2 # L2 B2 D2 F2 R2 // 3E (8-7/21)
# = w // finish (0/21)
∴ R2 D F L U R2 U2 D2 R' U R B2 L2 D2 F2 U F2 D' F2 R2 B (21 moves)
終わりに
試技について
今回はDR後無事にoptimal解を導くことができました。私が時間内に発見した①~⑪のDRの中ではこのDRでの21手finishが最も手数の少ない解だそうです!
また、私の採用したEOだとEO後のoptimal解ですら20手finishということもあり、かなり良いソルブをできたのではないでしょうか。
最近はHTRをとにかくたくさん作るようにしていますが、なかなか上手くいっていなかったので少しばかり自信を取り戻す試技となりました。
今後の課題
「FMCの思考過程を文字に起こして人に説明する」という事を初めてやってみて気付いたことは、自分のソルブの曖昧さです。
ある程度分かりやすいように論理立てた解説をするよう心掛けましたが、EOを見る順序やRZP手数の基準、ステップ毎のタイムマネジメントや解答書き下しまでの流れなど自分の中でも未だに曖昧でうまく説明できない部分が浮き彫りになりました。
技術面でも、例えば今回は➌と➎のように無駄に同じHTRを作ってしまった代わりに ~ U (~ U)のようなNISS HTR、QTを敢えて増やして4QTで解くパターンなど試せなかったHTRが数多くあり、探すべきものをより明確な方針を持って効率よく探索しないとDR後optimal付近を安定させるにはとても困難がありそうです。
1時間という限られた時間の中で、予め決められるような事柄で迷っている暇はありません。人に伝える前に、まず自分の中でやり方を一つ一つ整理して明確にする必要性を感じさせられました。
*1:この試技、及びこの解説は11月中旬に行っており、この記事での「最近」とはその頃の事です
*2:実際には L' D (B2 D) という4手EOも存在しますが、見落としていました
*3:X Y' X 又は X' Y X。X Y X や X' Y' X は別物なので注意
*4:この条件はあくまでHTR初心者の私が主観で決めたものであり、finish力がついてくれば真逆にする可能性すらあります。また、真逆にはしないにしてもQT間に必要なHTの数など、DRの状態を見て判断できる様々な情報を加味した別の指標を作る可能性は高いです
*5:それぞれU*をU, U'にしたパターン
*6:気になる方、スライスインサートに困っている方は以下の私の配信のアーカイブを参照してください。スライスインサートの話 - Shota (@MegaDBL) - TwitCasting