FMC同値変形学入門2 QSI&TSI編
※この記事はSpeedcubing Advent Calendar 2025の4日目の記事です。
昨日はうえしゅうさんによる自分のFMCの取り組み方 2025年版でした。
明日はRiuさんによるCommutatorは、怖くないです。
※この記事はFMC同値変形学入門1の続きです。まずそちらを読んでからこの記事を読んだ方が理解しやすいと思われますが、一応この記事単体でも読めるように尽くした所存です。
※これらの記事では便宜上「定理」という言葉を度々用いますが、あくまでFMCer諸君へ分かり易く実用的なテクニックを紹介するための記事であるという都合上数学的な厳密性は無く、記事内での定理の証明も与えません。「定義」という言葉も同様にwell-defined性を求めていないのでご容赦願います。
0. はじめに
この記事では、U/D軸のDR-sequence内に90°の E 回転を2つインサートするQSI (Quarter Slice Insertion)、及び180°の E 回転を3つインサートするTSI (Triple Slice Insertion) について解説する。
前回解説したHSIとこれらを合わせることで、EDH (EO→DR→HTR) を用いた解答にスライスインサートのみを施して得られる最適解のうちの多く (※筆者の主観) を理解することができるようになる。
注意
- 手順や回転記号A, Bについて、「AとBの積」や「A × B」という表現をすることがあるが、これらはいずれも「Aという手順を回した後に続けてBという手順を回す手順」すなわち「A B」のことを指す。また、「×」の代わりに「+」を用いることもあるが、意味は「×」と同じと思ってよい。
- この記事で使われる () という記号にインバースの意はなく、単なるひと括りを表す。
- この記事では練習問題を除き、DRの軸をU/D軸で固定して説明する。つまり、この記事で単にDR-sequenceといえば「任意の数・任意の順序のU, D, F2, B2, R2, L2の積で表される手順(及びそれ全体の集合)」ということになる。
- 式内の X2 はDR軸を除く2軸のうちある一方の軸を回転軸とする回転を表し、Y2 はもう一方の軸を回転軸とする回転を表す。
(例1: (X2)² = X2 X2 = R2 R2 又は R2 L2 又は L2 R2 又は L2 L2 又は F2 F2 又は F2 B2 又は B2 F2 又は B2 B2)
(例2: X2 Y2 = R2 F2 又は R2 B2 又は L2 F2 又は L2 B2 又は F2 R2 又は F2 L2 又は B2 R2 又は B2 L2)
1.センターインサートについて
この記事で解説するQSIとTSIは、どちらもセンターインサートに関するテクニックである。そのため、まずはじめにセンターインサートの基礎知識について述べておく。
センターのみを移動させる手順(例: E M2 E' M2)をインサートすることをセンターインサートと言う。複数の手順をインサートして最終的にセンターのみの移動を起こす場合もここではセンターインサートと呼ぶ。EDHでは通常 U↔D & F↔B のような対面2点交換×2のセンターインサートしか用いられず、試技の解説コメントなどでは「4x」と表記する*1。当記事では移動が起こっているセンターの属する層を明記して「4Ex」「4Mx」のように表すことにする。また、何も交換しない手順を便宜上「0x」とする。
センターインサートはセンターしか動かさないため、センターを動かさない通常の手順とは可換であり、スケルトン内のどこにインサートしても効果は同じである。
センター交換手順同士の関係は以下の通りである。*2
この関係式から、複数の4x手順をインサートして元の状態に戻すには、4Ex・4Mx・4Sxをそれぞれ偶数回ずつインサートする、あるいはそれぞれ奇数回ずつインサートする必要があり、逆にそうすれば必ずセンターは元の状態に戻ることが導かれる。
2. QSI
QSIを理解するにあたって、前回定義したID-sequenceを、I-sequenceとD-sequenceの2つに分けて定義し直す。
まずはID-sequenceの定義の復習から。前回から表現を改めたが、内容は同じである。
定義2.1 (ID-sequence)(再掲)
そして基本ID-sequenceはID-sequenceに含まれるものとし、ID-sequenceとID-sequenceの積で表される全ての手順をID-sequenceとする。
※nは0以上の整数
これを踏まえ、I-sequenceとD-sequenceを以下のように定義する。
定義2.2 (I-sequence, D-sequence)
(1)その手数が偶数か奇数か
(2)その1手目と最終手の回転面が同じか異なるか
の2つの条件の組み合わせによって、それぞれ基本I-sequenceか基本D-sequenceのいずれかに分類される。分類の仕方は以下の表の通り。
| (1) \ (2) | 同 | 異 |
| 偶 | I | D |
| 奇 | D | I |
そして基本I-sequenceはI-sequenceに、基本D-sequenceはD-sequenceにそれぞれ含まれるものとし、2つのI-sequence同士の積あるいはD-sequence同士の積で表される手順はI-sequence、I-sequenceとD-sequenceの積で表される手順はD-sequenceになるものとする。
言い換えるとつまり、あるID-sequenceを複数の基本I-sequenceと基本D-sequenceのみの積で表したとき、その中に含まれる基本D-sequenceの数が偶数個ならI-sequence、奇数個ならD-sequenceということでもある。
基本I-sequenceの例
・R2 R2
・F2 R2 B2
基本D-sequenceの例
・R2 L2
・F2 R2 F2
I-sequenceの例
・U2 B2 U2 R2 B2 L2 R2 D2
D-sequenceの例
・U F2 R2 L2 U' B2 R2 U2 R2
I-sequenceには(センターやエッジの向きを無視し、キューブを真上から見たとき)E層の4つのエッジの並び順を変化させないという性質があり、D-sequenceは逆にその並び順を逆順にするという性質がある。
この性質により、次の定理が成り立つ。
定理2 (QSI)
AがI-sequenceである ⇔ A = E A E' = E' A E
BがD-sequenceである ⇔ B +4Ex = E B E = E' B E'
このような E や E' のインサートを、90°回転のスライスインサートであることからQSI (Quarter Slice Insertion) と呼ぶ。
例2.1
U D2 があるので、ここに E' か E2 をインサートして手数を減らすことを考える。
まずHSIを試みると、他に U2 も D2 もないので手数を減らせないことがすぐに分かる。
続いてQSI。最初の U D2 の直後から見ていくと、まず R2 F2 R2 がD-sequence、続いて F2 B2 もD-sequenceになっている。従って R2 F2 R2 U F2 B2 は2つのD-sequenceの積であるためI-sequenceなので、この前後に E' と E をインサートすることで同値変形できる。E と D はキャンセルが起きて+0手なので、合計で1手の削減になる。
解答例
= U D2 [E'] R2 F2 R2 U F2 B2 [E] D
= D' B2 R2 B2 U R2 L2 U // Solved (8)
例2.2
U F B // EO (3)
R D F2 L2 U2 R D2 R // DR (11)
B2 U F2 U L2 D' // HTR (17)
B2 x2 // 4Mx (18)
このようにHTR後などにセンタースケルトンを作成した場合は、R/L軸のD-sequenceにQSIをすることで少ない手数でセンターインサートをできる場合がある。
今回はDR完成前の F2 L2 U2 R D2 R がR/L軸のDR-sequenceになっているので、ここに着目すると、L2 U2 R D2 R が(R/L軸の)D-sequenceであることが分かる。従って、この前後に M' をインサートすればセンターインサートが完了する。
解答例
R D F2 # L2 U2 R D2 R # // DR (11)
B2 U F2 U L2 D' // HTR (17)
B2 x2 // 4Mx (18)
# = M' // Solved (+1/19)
∴ U F B R D F2 R' L' F2 R B2 L F2 D B2 D L2 U' F2 (19 moves)
3. TSI
TSI (Triple Slice Insertion) とは、定理3.1に従って E2 を3回インサートすることで行うセンターインサートのことである。
定理3.1 (TSI一般形)
A も B も A B もID-sequenceでない ⇔ A B +4Ex = E2 A E2 B E2
例によって証明は省く*4が、仮にA, B, A B のいずれかがID-sequenceならば3つの E2 のうちの2つがHSIとして"相殺"されてしまい、実質 E2 1個分のインサート(つまり4xではなく2e2e4x)になってしまうことは明らかだろう。
例3.1
L2, F2, L2 F2 はいずれもID-sequenceではないので、TSIによってE層のセンターインサートが成立する。
解答例
このように+0手のセンターインサートの可否を調べるのは容易だが、+0手が不可能で自分でインサートする場所を選ばないといけない場合、定理3.1をそのまま使うのは難しい。独立でない3つのDR-sequenceが同時にID-sequenceでなくなる3か所を選ばなければならないからだ。
そこで、TSIの中で最も汎用的な「型」を紹介する。この型に当てはめて無理やり+2手や+4手のTSIをし、そこから更にHSIで無駄な E2 を相殺することで最適なTSIを得ることができる。
定理3.2 (TSI汎用型)
A =
を満たすとき,
A B +4Ex = E2 A E2 B E2
※n, mは0以上の整数
※AのX2とBのX2は同じ軸
このような条件を満たすA, Bは A も B も A B もID-sequenceではない (※ B A はID-sequenceになる可能性があるので注意!) ため、定理3.1のTSIが可能である。例3.1にあげたTSIもこの型の n = m = 0 の場合に他ならない。
他にも幾つか例を示す。
例3.2
このような状態になった場合、U2 y2 ではなく D2 してVRスキップのLSとして解くのが一般的だが、TSIでも揃えることができる。UもDも含まれない連続した動きは R2 F2, R2, L2 B2 の三つあり、そのうち
A = R2, B = L2 B2
の部分が「型」に当てはまっている。
この例では更に下線で示した部分がID-sequenceになっており*5、HSIを加えることで1手の削減が可能だ。
解答例
例3.3
= R2 F2 [S2] U2 L2 B2 [S2] F2 U2 R2 [S2] F2 U2 +4Sx
= R2 B2 D2 R2 U2 R2 B2 D2 z2 +4Sx
4Mx + 4Ex = 4Sx
が効果を発揮する。
つまり、ずれたS列のセンターを、M2 のTSIと E2 のTSIを行うことで直すことができるのだ。
= R2 [M2] B2 D2 [M2] R2 U2 [M2] R2 B2 D2 z2 +4Mx +4Sx
= L2 F2 U2 L2 U2 L2 F2 U2 x2 z2 +4Ex
= L2 F2 U2 [E2] L2 [E2] U2 L2 F2 [E2] U2 x2 z2 +4Ex +4Ex
= L2 F2 D2 R2 D2 L2 F2 D2 y2 x2 z2
= L2 F2 D2 R2 D2 L2 F2 D2
まとめると、以下のようになる。
※記号「* = w」は、「*」の直前の回転記号を2層回しにする、という意味である。
解答例
* = w // Finish (-2/8)
∴ L2 F2 D2 R2 D2 L2 F2 D2
4.練習問題
問題
与えられた手順または解答と全く同じ置換をもたらし、かつその手順より1手以上少ない手順を求めよ。ただし、(◯層無視)と書いてある問は、その層のエッジのみ変化させてもよいものとする。
(1) L2 F2 U2 L2 F2 B2 L2 F2 (E層無視)
(2) F B2 U2 F2 L2 F2 B2 U2 R2 L'
(3) R U2 L2 B2 U2 D2 L2 B2 U2 F2 (M層無視) (入門1の練習問題(3)より改題)
(4) U F // EO (2)
R B2 U D R' F2 D2 L // DR (8/10)
R2 U' // HTR (2/12)
L2 R2 B2 R2 U2 L2 R2 // Solved (7/19)
(5) F' // EO (1)
B2 U2 F2 L2 U2 L2 U' D2 L // DR (9/10)
D' B2 F2 L2 F2 L2 B2 D F2 D' // HTR (10/20)
R2 U2 R2 F2 D2 R2 B2 F2 L2 B2 F2 // Solved (11/31)
解答
(1) L2 F2 U2 L2 F2 B2 L2 F2
= L2 F2 [S2] U2 L2 F2 B2 [S2] L2 F2 [S2] +4Sx
= L2 B2 D2 R2 L2 B2 z2 +4Sx
= L2 [M2] B2 [M2] D2 [M2] R2 L2 B2 z2 +4Mx +4Sx
= R2 F2 R2 L2 D2 F2 x2 z2 +4Mx +4Sx
≒ R2 F2 R2 L2 D2 [E2] F2 x2 z2 +4Ex +4Mx +4Sx
= R2 F2 R2 L2 U2 B2 (-2手)
(2) F B2 U2 F2 L2 F2 B2 U2 R2 L'
= F B2 [S2] U2 F2 [S2] L2 [S2] F2 B2 U2 R2 L' +4Sx
= F' D2 B2 L2 D2 L2 R' z2 +4Sx
= F' [S'] D2 B2 L2 D2 [S'] L2 R' z2 +4Sx +4Sx
= B' L2 B2 U2 L2 F B' R2 L' (-1手)
(3) R U2 L2 B2 U2 D2 L2 B2 U2 F2
= R U2 [E2] L2 B2 [S2] U2 D2 [E2] L2 B2 [S2] U2 [E2] F2 [S2] +4Mx
= R D2 R2 B2 R2 F2 D2 F2 z2 +4Mx
≒ R R2 B2 R2 D2 F2 D2 F2 z2 +4Mx (∵BF)
≒ R' B2 R2 [M2] D2 F2 D2 F2 z2
= R' B2 L2 U2 B2 U2 B2 (-3手)
(4) U F // EO (2)
R B2 U D R' # F2 # D2 # L // DR (8/10)
R2 U' // HTR (2/12)
L2 R2 $ B2 R2 $ U2 $ L2 R2 // Solved (7/19)
# = $ = M2 // Another solution (-2/17)
∴ U F R B2 U D R L2 B2 R2 L2 D2 L' D' B2 L2 D2 (-2手)
(5) F' // EO (1)
B2 [1] U2 [2] F2 [1] L2 [1] U2 [2] L2 [2] U' D2 L // DR (9/10)
D' [3] B2 F2 [4] L2 F2 L2 B2 [4] D F2 [3] D' // HTR (10/20)
R2 U2 R2 F2 [5] D2 R2 [5] B2 F2 L2 [5] B2 F2 // Solved (11/31)
[4] = S2 // 2nd solution (-2/29)
[1] = [5] = S2 // 3rd solution (-5/24)
[2] = E2, [3] = E' // Final solution (-1/23)
∴ F U2 F2 R2 F2 B2 U2 R2 D L D' F2 R2 F2 R2 U R2 D' L2 D2 L2 B2 D2 (-8手)
*1:「c」だとcornerと被ってしまうので避けたのだと思われるが、なぜ「x」が用いられているのかは不明。
*2:見ての通り任意の4x同士の積は可換である。この記事では4xを敢えて「+」の記号を用いて表すが、あまり深い意味はない。
*3:前回は暗黙の了解としたが、ID-sequence全体の集合はDR-sequence全体の集合の部分集合であり、この定義内ではDR-sequenceの軸がU/D軸であることを前提としていたため、ID-sequenceにも当然「軸」の概念が存在する。例えばU2 F2 B2 はU/D軸のID-sequenceだがR/L軸やF/B軸のID-sequenceではない。
*4:「⇒」の証明の方針としては、VRでいうg,f,rのそれぞれが3つの E2 のどれか一つに必ず対応することを示せばよい。
*5:R2 F2 E2 R2 と途中に E2 が入っているが、E2 の有無で回転軸は変化しないので、ID-sequenceのままである。なお、回転面は変化するので、IとDのどちらになるかは展開してみないと分からない。実際、R2 F2 E2 R2 = R2 F2 U2 D2 L2 y2 よりy2を除くとこれは本質的にI-sequenceなので、E R2 F2 E2 R2 E' = R2 F2 E2 R2 が成り立つ (より正確には E R2 F2 E2 R2 E' = E R2 F2 U2 D2 y2 R2 E' = E R2 F2 U2 D2 L2 E' y2 = R2 F2 U2 D2 L2 y2 = R2 F2 E2 y2 L2 y2 = R2 F2 E2 R2 ということであり、ここでいう「本質」とは E と y は可換だがX2と y や E とX2は非可換であることに起因している)。
FMC同値変形学入門1 HSI&BF編
この記事の想定読者: EDH (EO→DR→HTR) を用いてFMCの解答を作ることができる者
0. はじめに
…… U L2 F2 L2 U2 B2 L2 R ……
これを見て何か思うことはないだろうか。
一見するとただのFMCの解答の一部分のようだ。しかし、ここには1つの罠が隠れている。
実は、L2 F2 L2 U2 B2 L2 という手順は R2 B2 L2 D2 F2 R2 という手順と、途中経過は異なるが最終的に全く同じ置換をもたらす。このような関係を「=」を用いて次のように表す。
L2 F2 L2 U2 B2 L2 = R2 B2 L2 D2 F2 R2
そしてこれを最初の式に代入すると、キャンセルが生じて1手減らすことができるのだ。
U L2 F2 L2 U2 B2 L2 R
= U R2 B2 L2 D2 F2 R2 R
= U R2 B2 L2 D2 F2 R'
この記事では、このような書き換えをキューブを使わず回転記号上の操作のみで行う「同値変形」について、その基本的な技術であるHSIとBFを例に挙げて解説する。
注意
この記事ではDRの軸をU/D軸で固定する。
この記事やこの分野で使う記号・用語
・= …… 右辺と左辺の置換が等しい。
・≒ …… E列の状態を無視すると、右辺と左辺の置換が等しい。
・[] …… 式変形するところを分かりやすくするために付けたカッコ。このカッコ自体を無視しても式に影響はない。
・LS …… Leave Slice の略。DR後、E層を除く全てを揃えること。また、それが完了した状態。
・スライスムーブ …… E または M または S 層の回転。
・スライスインサート(SI) …… スライスムーブのインサート。
・DR-move …… DR後に回してもDRが崩れない回転(U, U', U2, D, D', D2, F2, B2, R2, L2)。
・DR-sequence …… DR-moveのみで構成された手順。
・HTR-move …… HTR後に回してもHTRが崩れない回転(U2, D2, F2, B2, R2, L2)。
・HTR-sequence …… HTR-moveのみで構成された手順。
・HSI …… 1章参照。
・ID-sequence …… 1章参照。
・BF …… 2章参照。
1.スライスインサート (HSI)
この章では、DR-sequence(<U,D,F2,B2,R2,L2>のみで構成された手順)の中に、E2 を2回インサートして元と全く同じ状態にする、最も基本的なスライスインサートについて解説する。
まず始めに、DR-sequenceのうち、E層のエッジが「無交換」あるいは「対角交換」と呼ばれる状態になる「ID-sequence」について定義する。*1
定義 (ID-sequence)
U, U', U2, D, D', D2 ↦ (何も書かない)
F2, B2 ↦ F2
R2, L2 ↦ R2
このとき
最初と最後の1手がR2で他は全てF2、または、最初と最後の1手がF2で他は全てR2
になる*2とき、そのDR-sequenceを基本ID-sequenceと呼ぶ。
そして、基本ID-sequenceを1個以上連続で繋げた形になっている手順をID-sequenceとする。
基本ID-sequenceの例
・R2 L2 U'
・F2 U2 R2 L2 D2 F2
ID-sequenceの例
・F2 U2 R2 L2 D2 F2
・U2 B2 U2 R2 F2 L2 R2 D2 U'
ID-sequenceの前後では前述した通りE層エッジに「無交換」あるいは「対角交換」という置換が起こる。*3
この性質により、次の定理が成り立つ。
定理1 (HSI)
AがID-sequenceである ⇔ A = E2 A E2
つまり、作成した解答の中にID-sequenceが含まれている場合、そのID-sequenceの左右に E2 を付け足しても結果は変わらないのである。
(無交換or対角交換のPLL(U,H,Z,E,N,V,Y)が、U2してからその手順を回してもコーナーが"揃う"のと一緒である。)
このようなインサートを、当記事ではHSI (Half Slice Insertion)と呼ぶ。これは(少なくとも執筆現在は)一般的な呼称ではなく、単にスライスインサート (SI)と呼ばれることもある。
例1.1
D2 R2 F2 L2 U2 B2 // Solved
このようにHTR前とHTR後の繋ぎ目で U D2 のような同時回しが生じてしまった場合、そこから始まるID-sequenceを挟むように、かつ U2 か D2 があってキャンセルできる位置に E2 をインサートすることで1手減らすことができる場合がある。
今回は R2 F2 L2 が ID-sequenceになっており、その右側に都合よく U2 があるので、HSIで1手減らすことができる。
解答例
例1.2
この例では E2 をインサートしても手数が減ることはないが、R2 L2 があるので M2 をインサートすることができる。
解答例
このように、HTR後は全ての軸がDRになっているため、どの軸でもHSIをすることができる。
FR後に R2 L2 や F2 B2 のような部分が残る場合は、HSIで手数が減らせる場合が多いので、気をつけたい。
また、この例ではまだ最後に F2 B2 が残っており、この直前にあるID-sequence U2 F2 L2 B2 D2 の左右に S2 をインサートすることも出来るが、左側の S2 はキャンセルが起きないので、合計の手数は変化しない。
解答例2
2. ブロッキーフィッシュ (BF)
前章で解説したHSIは、スライスムーブのインサートである。したがってコーナーの動き、つまり解答の大まかな「構造」が変化しないし、R2 L2 のような同時回しの部分が無ければそもそも手数を減らすことができない。
それに対し、これから解説するBFは、解答の大まかな「構造」を変化させる同値変形であるため、R2 L2 のような部分が無くても手数が減らせる可能性がある。
BFとは、以下の定理を用いて同値変形をするテクニックである。
定理2.1 (BF)
なお、「E層の状態を無視すると A B = B A」を「≒」という記号を用いて「A B ≒ B A」と表す。
この定理はつまり、…… U2 ◯2 U2 △2 …… のようにDR-sequenceの中に2つの U2 があり、その間に側面回転 ◯2 が1つ、その外側にも別の軸の側面回転 △2 が1つ隣接していれば、△2 は U2 ◯2 U2 の前に回しても後に回してもよいということである。
(注意1:U/D層の状態は変化しないが、E層の状態は必ず変化する。そのためこの同値変形はLS後のスライスインサートをする(or VRを作る)前に行うべきである。)
(注意2:対称性から、U2 ◯2 U2 ではなくD2 ◯2 D2 でも全く同じ事が可能だが、U2 ◯2 D2 や D2 ◯2 U2 のときは少々処理が変わるので、例2.2を参照。)
(注意3:上で示したAのどこかに E2 や M2 や S2 を挿入したものでも同じ事が成り立つ。例2.3を参照。)
この同値変形により回す軸の順序が変わるため、前後とキャンセルさせたり、何もなかったところから F2 B2 のような部分を生み出してHSIで手数を減らせることもある。
なお、完成状態から U2 F2 U2 R2 と回すとU面とD面の模様が魚のようになるため、この状態そのものや、AとBを入れ替える同値変形のことをBlocky Fish (BF) と呼ぶ。
例2.1
F2 D2 L2 D2 R2 B2 // LS
この場合HSIはできないが、A = D2 L2 D2 、B = F2 とすることでBFをすることができる。
U F2 D2 L2 D2 R2 B2
= U [F2] [D2 L2 D2] R2 B2
≒ U [D2 L2 D2] [F2] R2 B2
= U D2 L2 D2 F2 R2 B2
このままでは手数が変わらないが、U D2 の部分に適当に E2 を入れることでLSまでの手数を1手減らすことができる。(実戦ではこの操作をせずに直接VR等をしてE層を揃えにいってもよい)
U D2 L2 D2 F2 R2 B2
≒ U D2 [E2] L2 D2 [E2] F2 R2 B2
= U' R2 U2 F2 R2 B2
解答例
R2 U2 F2 R2 B2 // LS
例2.2
R2 B2 D2 F2 U2 L2 // LS
このように、A = U2 ◯2 D2 の場合はどちらかを2層回しにして U2 か D2 に統一することで、BFを使うことができる。
D2 F2 U2 L2
= Uw2 y2 F2 U2 L2
= y2 [Uw2 F2 U2] [L2]
≒ y2 [L2] [Uw2 F2 U2]
= R2 D2 F2 U2
解答例
R2 B2 R2 D2 F2 // LS
Aの最初と最後の1手が反対の面の場合は、BFを使うとBが反対の面の回転になると覚えてしまってもよい。
定理2.2
例2.3
この例は一見BFもHSIも使えないように見えるが、以下の事実から、BFを使うことができる。
定理2.3
(例えば、A* = U2 M2 F2 U2, B = R2 のとき、
A* B ≒ B A* が成り立つ。)
したがって、HTR後の R2 U2 R2 L2 B2 D2 の部分は
R2 U2 R2 L2 B2 D2
= [R2] [U2 M2 F2 U2] x2
≒ [U2 M2 F2 U2] [R2] x2
= U2 R2 L2 B2 D2 R2
と同値変形できるので、NISSの繋ぎ目でキャンセルが発生して、1手削減することができる。
解答例
3.練習問題
問題
与えられた手順と全く同じ置換をもたらし、かつその手順より1手以上少ない手順を求めよ。ただし、(◯層無視)と書いてある問は、その層のエッジのみ変化させてもよいものとする。
(1) L2 D2 L2 B2 U2 R2 L2 F2
(2) U R2 U2 B2 U2 F2 R2 L2 F2 U'
(3) R U2 L2 B2 U2 D2 L2 B2 U2 (M層無視)
解答
(1) L2 D2 L2 B2 U2 R2 L2 F2
= L2 [M2] D2 L2 B2 U2 [M2] R2 L2 F2
= R2 U2 L2 F2 D2 F2 (-2手)
(2) U R2 U2 B2 U2 F2 R2 L2 F2 U'
= U R2 U2 [M2] B2 U2 F2 [M2] R2 L2 F2 U'
= U R2 U2 R2 L2 F2 D2 B2 F2 U'
= U R2 [S2] U2 R2 L2 F2 D2 [S2] B2 F2 U'
= U R2 F2 B2 D2 L2 R2 F2 U2 U'
= U R2 F2 B2 D2 L2 R2 F2 U (-1手)
(3) R U2 L2 B2 U2 D2 L2 B2 U2
= R U2 L2 B2 [E2] R2 F2 U2 [y2]
= R U2 L2 B2 E2 [Lw2 x2] F2 U2 y2
= R [U2] [L2 B2 E2 Lw2] x2 F2 U2 y2
≒ R [L2 B2 E2 Lw2] [U2] x2 F2 U2 y2
= R L2 B2 U2 D2 L2 D2 B2 U2
≒ R L2 [M2] B2 U2 D2 L2 [M2] D2 B2 U2
= R' F2 D2 U2 R2 D2 B2 U2 (-1手)
FMC Advent Calendar 2024 13日目
はじめに
この記事は FMC Advent Calendar 2024 の13日目の記事です。
ごきげんよう。Shotaです。今日はscramble(1)を解いて簡単に思考過程を解説します。
本来はまとめて3試技分やる予定でしたが、私の絶望的なまでの計画性の無さ(前日の22時からこの記事の稿を書いています)により、本日は第1試技のみのお送りとなります。アドカレの枠はまだまだ空いているので、残りの2試技も後日投稿する予定です。
上述の通り執筆時間が全く足りておらず、普段のトリコンの解説に毛が生えた程度になってしまいますが、どうかご容赦ください。
結果
solution: L2 F L2 B2 L2 D L2 U2 D2 B' R2 F L2 U2 R2 F2 U R' L B L (21 moves)
思考過程
EO
まず2個のキューブを使ってノーマルとインバースのスクランブルを回し、スクランブルミスが無いかチェックします。
その後ノーマルの3軸をざっと数秒ずつ確認して、EOをどのくらい書き出すかの方針を決めます。(EO数が4以下の軸がある場合は、その軸のインバース側も確認してから方針を決めます。)
今回のEO数はFB/RL/UDがそれぞれ10/6/6です。
10EOはlinearだと最少でも6手なので論外ですね。RL軸は4手EOが4つ(B R' B2 L と B L' D2 R というHTR Equivalent EOを同一視すると3つ)ある形ですが、UD軸は4手EOが無く、全体的にEOが少なそうです。そのため、探索範囲はRZP≦5とし、パッと思いつく5手EOを全部書き出すゾ〜という感じの方針を立て、EOを書き出していきます。
〜7分後〜
4手EO11個(全部)、5手EO約35個で約46個書けました。FB軸も F(), B(), F B() など簡単なNISS EOが無いかどうかは確認しましたが、ゼロでしたね。
最後の最後のインバースUD軸で4手EOが4つ分見つかり、これは4手→5手の拡張を書き出してたらキリが無いぞという事でそこだけ諦めましたが、その他は専ら方針通りです。
書き出したEO
L' D' B R
L' D' L2 B R
L' B' D2 B2 R
L' B2 D2 B' R
L' D2 R2 F' R
L' R' D2 F' R
B R' B2 L
B L' D2 R
B U2 R' B2 L
B F2 R' B2 L
F2 L' B D2 R
F2 L' D' B R
U2 L' B D2 R
U2 L' D' B R
R (R D2 B' L)
D2 R (D B R)
D2 R (R2 F' R)
U' F* U* B D
(L' B* R L)
(B2 L' B* R L)
(F2 B* R' D2 L)
(R U2 F B R)
(B R) R' D2 R
(R) D2 B R
(R) B° D2 B R
(R) D R2 F' R
(R) R' D F' R
(R) R' F' D2 R
(R) F2 U2 B L
(F* U' B2 D)
(F* D' R2 U)
(B2 D) F' B' D
F* は F と F' どっちでもOK、B° は B と B' と B2 どれでもOK の意です。
EO後
片っ端から5手以下のRZPを探しに行きます。
・・R2 F // RZP DR-4e4c/AR-1e1c
・・・(D' F U L2 D2 F' R2 F) // 2c4 (13)
・・F // AR 4e2c/6e2c → 微妙
・・F (F) // RZP DR-4e4c → 微妙
・U' F U' B D // EO&RZP DR-4e4c/AR-1e1c
・・L U2 R' B' D2 L2 B // 2c4 (12)
・・B2 R D2 B2 L' R2 B // 4e2c3 (12)
・・・L U2 L' F2 L // HTR (17) → 微妙
・・(B) // RZP DR-4e4c/AR-1e3c
・・・(B2 F2 U2 D2 L2 R' B) // 4e2c3 (11)
・(F' U' B2 D) // EO
・・R L // RZP DR-4e4c/AR-1e3c → ゴミ
・(L' B R L) // EO
・・(R2 D) // RZP DR-4e4c/AR-2e2c → ゴミ
・(L' B' R L) // EO
・・(L2 U) // RZP DR-4e4c/AR-1e2c
・・・L2 F L(w)2 B(w)2 L2 D // 2e4b2 (11)
・・・・D2 R2 B U2 F // HTR (15) → 微妙
・・・・L2 U2 D2 B' R2 F // HTR (17)
・・・・・L2 U2 R2 F2 U2 // Finish (21)
なんか良い感じの4b2をそのまま回してたら、最後まで揃っちゃいました。
後は20手以下を探すしかする事がないので、このDRのインバース側などを確認してもっと良い解が無いことを一通り確認した後、他の色々なDRから短いHTRをチェックしにいきます。特に同じRZPからは、(w)で表した部分を2層回しにしたりだとか、他にもDRまでのアプローチがいくつかあるので、可能な限り見ておきます。
・・(L2 U) // RZP
・・・R2 B2 R2 L2 F' D // 2e4b2 (11)
・・・F2 R2 F B D2 B' U // 2e4b2 (12)
など、2eの4b2が多いので短めのHTRは割と見つかりましたが、sub21できるようなものは現れず。
さっきの21手が出た時点で書き出した全てのEO自体はチェックし終えていて時間が押していたのもあり、結局20手以下は見つからずに終了しました。
AR入門
始めに
この記事ではFMCおける新たな概念であるAR (別名・JZP) について解説する。
筆者の知る範囲では日本語での解説はこれが初となる。
ARについては筆者含め世界中のFMCerにとってまだまだ研究中の段階であり、将来的にこの記事の内容は非常に初歩的な教養になるためタイトルは「入門」としているが、実際のところ筆者がARについて現在解っているほぼ全てを解説する。
回転記号、前提など
この記事では以下の略号を用いる。
- X* ……… X または X'
- Xⁿ ……… X または X2 または X'
「DR」のような略語などとの区別を明示するため、この記事では回転記号は全て太字で表す。
また、特に表記がなければ「EO」「DR」はそれぞれ「F/B軸EO」「U/D軸DR」を意味するものとする。
○○M
○○ Minus の略。○○にはDRなどのステップ名が入る。「○○になっていないパーツ、及びその数」を表す。
○○MがエッジX個、コーナーY個の場合、「○○-XeYc」(○○マイナスエックスイーワイシー) とも表す。
(例)左の状態のHTRMはエッジ4個、コーナー2個だ。右の状態はU/D軸がDR-2e4c、R/L軸がDR-4e2cだ。

揃っていないエッジを単にbad edgeなどと言う事もあるが、それではどの軸についての話なのかが分かりにくいので、○○Mという言葉を普及させたいと筆者は思っている。
ARの定義・性質
ARとは
Axial Reduction の略*1。
リダクションの順番としては、EO→AR→DR→HTR→FR→Finish となる。
ARが完成した状態とは、「{R, L, U2, D2, F2, B2} のみ*2を用いてDRを作ることが可能な状態」のことである。
{R, L, U2, D2, F2, B2} とはつまりR/L軸のDR-moveであるが、DR後の (U/D軸の) DR-moveと区別するため、これを「(R/L軸の) AR-move」(エーアールムーブ) と名付ける。

EO後のDRの軸は2通りあるので、ARの軸も2通り存在する。それぞれ
F/B軸EO → R/L軸AR → U/D軸DR
F/B軸EO → U/D軸AR → R/L軸DR
というルートになる。この記事では特に表記がなければ「AR」とは「F/B軸EO後のR/L軸AR」のことを指すものとする。
ARの重要な性質として、一方の軸がARになった後にNISSをするともう一方の軸がARになるというものがある。これは後の「 NISSによるARMの変化」の項で詳しく説明する。
ARMの数え方
とあるパーツがARになっている、とは次の条件を全て満たしていることとも考えられる。
エッジの場合
- EOが合っている
- U/D面色を含まないエッジの場合 → R/L層にある(E層エッジがM層にあると、いくらAR-moveをしてもM層のままなのでDRを作れないため)
- U/D面色を含むエッジの場合 → どこにあってもよい
コーナーの場合
- U/D面色ステッカーがU/D/F/B面にある(コーナーがR/L面を向いていると、いくらAR-moveをしてもR/L面のままなのでDRを作れないため)
従って、ARM(ARになっていないパーツの数)を数えるには、
- エッジ ……… M層にあるU/D面色を含まないエッジの数
- コーナー ……… R/L面にあるU/D面色の数
を数えればよい。
M層にあるエッジは4つ、R/L面にあるコーナーは8つなので、ARMは0e0c~4e8cの45通りの可能性があることになる*3。
(1) R U
(2) R U R U


正解 → *4
単位手順によるDRM/ARMの変化
EO後に使える回転 {Uⁿ, Dⁿ, Rⁿ, Lⁿ, F2, B2} によるARM(とついでにDRM)の変化を以下の表に示す。各回転の前後で保存する(変化しない)ものが「O」、変化する可能性があるものが「X」である。

単純にDR-moveではDRMが変化せず、AR-moveではARMが変化しないというだけである。何故そうなるのかはDRやARの定義から自明なので説明は省く。
ここで注意すべきなのはHTR-move、つまり180°回転ではDRMもARMも変化しないという点だ。つまり、一度キューブを DR-XeYc/AR-ZeWc にしてしまえば、180°回転のみで DR-XeYc/AR-ZeWc のDRトリガーにセットアップできる可能性があるということである。
(セットアップできない可能性もあるが、その辺りの事情は少しばかり難しい話なので割愛する。*5)
ARとfake AR
さて、これでARMの数え方などは分かったが、そもそもARMが0e0cなら本当にAR-moveだけでDRを作ることが出来るのだろうか?
答えは否である。
HTR-0e0cであってもHTR-moveでは揃えられないfake HTRがあるように、AR-0e0cであってもAR-moveではDRを作れないfake ARという状態が存在する。
与えられた状態がfake ARではなく (真の) ARであるための必要十分条件は、以下の2つを両方満たすことである。
- ARMが0e0cである
- コーナーのDRMが偶数である
なぜコーナーのDRMが奇数だとfake ARになってしまうのかを軽く説明するが、読み飛ばしてもらって構わない。
R* または L* をすると、U/D面にあったものはF/B面に、F/B面にあったものはU/D面に移動する。つまり全てのコーナーがU/D/F/B面のどれかを向いた状態なら、DRだったパーツがDRMに、DRMだったパーツがDRに、という反転が4パーツ同時に起きるのである。
F* や B* をしたときのEOの変化を思い浮かべれば理解しやすいかもしれない。偶数個のパーツが同時に反転するとき、揃っているものの総数の偶奇は常に不変なのだ。
従って、コーナーのDRMが奇数個だといくらAR-moveをしても奇数個のままなのでDR-0e0cにはなり得ないのである。
逆に言えば、AR-0e0cはDRMさえ偶数であれば必ずAR-moveでDRを作ることができる。どのようにするのかは「AR後のDRの作り方」で説明する。
とりあえずAR-0e0cのときは、DR-Xe偶数cならAR、DR-Xe奇数cならfake ARだということさえ分かればOKである。

実戦で使う
ARの作り方
ARへのアプローチの仕方は幾つか存在する。
が、ここまでARについて解説してきて申し訳ないが、ここではそれを1つも紹介しない。
何故なら、EOが揃っただけの何も無いところから、わざわざARを作ってからDRを作るというのは多くの場合において非効率だからである。
つまり、ARをソルブで使いたかったら、ひたすら多くのEOをチェックしてARskip、もしくは数手でARになるのが一目瞭然なEOが出るのを待つのが得策である。
AR後のDRの作り方
AR-moveでDRを作るとは、つまり「 {R, L, U2, D2, F2, B2} を用いて、F/B面側にあるU/D面色パーツを全てU/D面に集める」ということである。
これを読んで何か気づくことはないだろうか?
そう、これはR/L軸のDRからHTRを作るのとやっていることが全く同じなのである。
ゆえに、ARからDRを作るのは簡単だ。以下のようにしてR/L軸ARをR/L軸DRに読み替えて疑似的なHTRを作ればよい。
- R/L面にあるF/B面色 (緑/青) ステッカーをR/L面色 (赤/橙) だとみなす
- U/D/F/B面にあるR/L面色ステッカーをF/B面色だとみなす
- 疑似HTRをつくる
なお、U/D面にU/D面色が集まればそれで良いので、この疑似HTRはfake HTRでも何でもよい。QTも都合の良いように解釈して構わない。
(例) スクランブル : R' U' F D R2 U2 L' U F2 L2 R B' L2 D U' L R2 D2 B2 R2 U2 R' U' F
既にARまで完成している。現実にはまずあり得ないラッキースクランブルだ。
このRL軸ARを疑似R/L軸DRに読み替えると右の図のようになる。ついでに白と黄、緑と青、赤と橙もそれぞれ同一視している。


HTRMだけをみるとこうだ。これは B2 R' U2 L' U2 D2 L や D2 L' F2 B2 R B2 R などでHTRを作れる。

(解答例)
// AR
B2 R' U2 L' U2 D2 L // DR
B2 D R2 B2 U R2 D' // HTR
F2 U2 R2 // finish
NISSとの関係
NISSによるARMの変化
NISSした際、ARMはDRMのように不変……とはならないが、変化の仕方に特徴がある。
結論から述べると、スイッチ前のU/D軸のARMがスイッチ後のR/L軸のARMになり、スイッチ前のR/L軸のARMがスイッチ後のU/D軸のARMになる、というように軸が入れ替わった形になる。

いま一度ARMの定義を思い出してみよう。とあるパーツがR/L軸ARになっていないとは次のことだった。
- エッジ ……… E層エッジがM層にある
- コーナー ……… U/D面色がR/L面にある
つまり、E層エッジ → M層、あるいは U/D面コーナー → R/L面 という移動を果たしたパーツの数がR/L軸ARMとして数えられている。

ではここでスイッチをするとどうなるか。
スイッチすると全てのパーツの移動が逆方向になるので、元のR/L軸ARMの数だけ M層エッジ → E層、あるいは R/L面コーナー → U/D面 という移動が起こる。

これはそっくりそのままU/D軸のARMの定義と同じだ。
(U/D軸のARMの定義が分からない人はキューブをz持ち替えしてみればよい。U/D面 ↔ R/L面、E層 ↔ M層 というように入れ替わるのでU/D軸ARMは
- エッジ ……… E層にあるM層エッジの数
- コーナー ……… U/D面にあるR/L面色の数
になることが分かるはずだ。)
従って、スイッチするとR/L軸ARMがU/D軸ARMになるというわけだ。同様に、U/D軸ARMもR/L軸ARMになる。
また、このことから一方の軸がAR-0e0cならばスイッチ後の他方の軸がAR-0e0cになることまでは分かるが、それがfakeになるかどうかは実際にその他方の軸のDRMを確認してみないと分からないように思えるかもしれない。
が、実際は単純にスイッチ前がARならスイッチ後もARに、スイッチ前がfake ARならスイッチ後もfake ARになる。
これはAR後の解答の構造を考えれば分かりやすい。
最初に示したARの定義は「{R, L, U2, D2, F2, B2} のみを用いてDRを作ることが可能な状態」だった。
言い換えれば、ARとは
{R/L軸DR-move} {U/D軸DR-move}
のように2つの軸のDR-moveを掛け合わせた形の解が存在する状態のことだ。
そしてこれは反対側から見れば
( {U/D軸DR-move} {R/L軸DR-move} )
という解でもあるので、当然ノーマル側がARならばインバース側から見てもARになっているのである。
そしてfake ARはこのように2軸のDR-moveの積で表される解が存在しない状態なので、ノーマル側とかインバース側とか関係なくfake ARなのである。
NISS判断とARM
前述したように、ARにさえなっていれば簡単にDRが作れるが、狙ってARを作るのはあまり得策ではない。
ではARMとは一体何の役に立つのか? 実はARMは、EO後あるいはRZP後のNISSをすべきかどうかの判断材料になりうるのだ。
下の表は、DR-4e4cが各ARMにおいてどのくらいの確率で6手以内にDRを作れるかを表している。*6
DR-4e4c → DRのsub7率
ARMによってかなりの差があることが一見して分かるだろう。
AR-0e0cが47.53%と最も高く、次いでAR-2e4c, 1e2c, 2e3c, 0e1c, ……となっている。この表をまるまる覚える必要はないが、
- 25%を超える、「比較的良いケース」が0cから4cに1つずつあり、表を斜めに占めている(コーナーが増えれば増えるほどエッジも増える)
- コーナーが同じ個数なら、エッジの個数が「比較的良いケース」から離れるほど「比較的悪いケース」になっている
などは覚えておいて損はない。
また、よく観察すればこの表がAR-1e2cを中心におおよそ回転対称形となっていることにも気付くだろう。こういった性質は偶然ではないが、なぜそうなるのかは読者自身で考えてほしい。全てを説明していたらキリがないので。
このように、どのARMが「比較的良い」のかさえある程度暗記していれば、わざわざ全てのパーツをNISSトレースしなくても、スイッチ後のARMの情報だけで良し悪しを判断できるのだ。
もちろん全てのNISSを確認できればベストだが、FMCは時間との戦いである。少しでも効率よく探索するため、優先順位をつけられるのならそうすべきだろう。
ということで最後に、多くの人が使っているだろうDR-4e4c, DR-2e4c, DR-2e3cのそれぞれについて
①6手以内でDRを作れる確率 ②平均最少手数 ③最も手数が少ないパターンの一例
を掲載する。
何を覚えて何を覚えないかは任せるが、前述したように「比較的良いパターン」を知っておくときっと役に立つだろう。
DR-4e4c
①6手以内でDRを作れる確率 (再掲)
②平均最少手数
③最も手数が少ないパターンの一例
DR-2e4c
①6手以内でDRを作れる確率
②平均最少手数
③最も手数が少ないパターンの一例
DR-2e3c
①6手以内でDRを作れる確率
②平均最少手数
③最も手数が少ないパターンの一例
FMC Advent Calendar 2023 21日目
はじめに
この記事は FMC Advent Calendar 2023 の21日目の記事です。
昨日は鉄CuberさんによるFMC Advent Calendar 2023 (3)でした。
明日は煎茶さんによるあむす式をやってみるです。
今回は(3)のスクランブルを解いていきます。解いた日は2023/11/30です。
結果
solution: D R2 B' L2 D2 F2 R2 L2 D2 R U2 D' B2 D L' U2 L2 B2 D F2 (20 moves)
思考過程
EO
いつも通り4手以下のEOを書き出します。
3手EO4つ、4手EO18個です(実際には4手EOがあと22個存在するようです)。
試技当時の実力では何十個もEOを書いたところで全部見ることができないので、5分で全軸を確認することを優先しています。
DR
ノーマルの3手EOから順に見ていきます。
①: D(w)2 R D F2 R2 L2 U R // 2c3 (8/11)
②: B2 L' F2 U2 R2 L2 D' L D2 L // 2c5 (9/12)
R' D B // EO
③: U' L R2 F2 B2 D' F(w)2 D2 L // 2c4 (9/12)
早速14DQのものが見つかりました。続いてノーマルの4手EOを見ます。
④: U L D2 R' F(w)2 L2 U // 2c4 (7/11)
B' L F' U // EO
⑤: F B2 U2 L B2 R' F R2 F // 2c4 (9/13)
他のEOも色々見ましたが良さげなRZPが見つからないので次へ。
次は本来ならインバースの3手EO→インバースの4手EOと見ていくのですが、ここで一つミスを犯します。
([D', F2] R) を4手だと勘違いしてしまったのです。
先ほど私はこのようにEOを提示しました。この書き方は実際の書き方に準じているのですが、全部で何個あるのか。どれが何手なのか。分かりにくいと感じた方も多いのではないでしょうか。
その通りです。
この書き方はEOが少ないときは省スペースで良いのですが、視認性に欠けるところがあるので、近々メモ用紙の使い方を多少なりとも変更しようと思っています。
ということで、当時の私は3手EOをノーマルの2つしか無いものだと思い込んでいたため、次に見るのはこれらの3手EOのEO後NISSになります。
⑥: (F2 D' U2 L F2 R D B2 D) // 4a2 (9/12)
⑦: (F2 D' B2 L2 U2 L D' B2 D) // 4a1 (9/12)
R' D B' // EO
⑧: (U2 L U' ^^^ F2 U' D ^ L U L) // 2c5 (9/12)
⑨: (U2 L) D L2 U2 R U' R // 2c5 (8/11) , 4a3 (9/12)
13DQはまだ心許ないですが、一応この⑦が第一候補にあがります。
このあたりで25分強経過していたと思います。いつも通り残り時間でまだ見ていない4手EOを確認していきます。
時間が無いときはRZP≦4(つまりEO時点で既にRZPが済んでいるもの)に絞り全EOの確認を優先した方が良い気がしています。
このEOは既にDR-4e4cになっていますが、うまく1手トリガーにセットアップできず、4手セットアップ→5手トリガーという微妙な感じになってしまいました。
また、さっきRZP≦4と言っておいてなんですが、なんか短いDRが出来そうだったので5手RZPに手を出してしまいました。
11手DRはできましたが3QTなので12手1QTには勝てず。
そんなことをしてたら未確認EOを幾つか残して30分が経過してしまいました。
が、ここで漸く残していたEOの中に3手EOが含まれていることに気付きます。
EO用にインバーススクランブルしたキューブが残っていたのでちらっと確認してみると一方は既にDR-4e4cです。
これはどうしようか一瞬迷いましたが、ここは安全を取ってこのEOは見なかった事にします。
そもそも4eの4a1は上手く短いHTRが見つかればすぐにoptimal解が見つかりますが、エッジの位置が悪いと本当に何も見つからない事も多いです。
思えばつい先日の大会の3試技目でも12手の4e4a1に後半30分をかけて、見つかったのは28手finishだけという大爆死を遂げ苦い思いをしました。
U (U B U) // EO (4/4)
— Shota (@MegaDBL) 2023年11月26日
R' F L' B // DR-2e3c (4/8)
(R B R' B) // DR 4a1 (4/12)
R2 $ B2 U2 D2 R2 B2 U2 B2 L' # // HTR (9/21)
U2 L2 B2 U2 ^ // 3e3E (4/25)
^ = U2 B2 L2 F2 D2 F2 L2 # B2 // 3E (8-7/26)
# = M, $ = M2 // finish (6-4/28)
ここは何としてもDNFは避けたいところ。
自分の不手際で星になった3手EO達を惜しみつつ、採用DRを⑦に確定してHTR探索に入ります。
HTR
純粋な4a1なので、まずはもちろん1手トリガーでHTRを作ることを考えます。
まずはノーマルから。
…………!?!?!?!?
普通に4手セットアップから1手トリガーを回したらHTR後1手でスライス残しに!!!!
ここまで短いと上手い人ならDR時点で完成まで読めるのかもしれません。
NISSのつなぎ目がU2とDで微妙にキャンセルしなかったり、よくみるとDR面の回転がR2とRのみで、しかもその間がU2 B2 D2なのでどうやってもスライスインサートで+2手以上かかりそうなのは気に食わないですが、それらを差し引いてもあまりにラッキーです。
前回同様、即スライスインサートして解答を完成させます。
# = M2 // finish (4-2/20)
普段ならスライスインサートで+2手はかなり渋いですが、DR後があまりに短すぎて挿入の余地が無いことの表れなのでポジティブに捉えましょう。
なお、この2E2EをDR外にインサートしたり、M2などの2e2e2x2xをかました後に別の場所でセンターインサートするなども考えましたが、どれもダメでした。
さて、DR後8手フィニッシュとなるとスライスの選び間違いなどを除きoptimalの可能性が非常に高いです。
一応別のHTRを色々探しもしましたが、少なくともDR後でこれ以上の改善は期待できなさそうです。
DR後が無理なら、次はDR前のスライスインサート/トリガー代替などを試します。
(F2 D'〈B2 L2 U2〉L [D' B2 D] ) // DR
今〈〉で示した部分はS層だけみると既にDRが完成しているため、〈〉内の任意の位置にS2をインサートすることができます。
また、[D' B2 D] というDRトリガーは [U' L2 U] に置き換えたり、トリガー内の任意の位置でE2のインサートも可能です。
このようにしてコーナーは変えずに色々なバリエーションのDRを試しましたが、どれも20手finishには敵いそうにありませんでした。
手を変え品を変え尽くしましたが、トリコン2023後半期第12節のように奇跡が起こるわけでもなく。
残り5分以上余っていますが、提出する解答を決定して試技を終了します。
(F2 D') // DR-2e4c (2/5)
(B2 L2 U2 L D' B2 D) // DR, 4a1 (7/12)
R2 # U2 B2 # D2 R // HTR (5/17)
U2 // 2E2E (1/18)
# = M2 // finish(4-2/20)
蛇足
最後に余った時間で見ていなかった3手EOからDRを作ってみました。
⑫: (D' L2 D2 L2 F2 B U) // 2c4 (7/10)
⑬: F2 U' D' F2 L2 D F // 4b3 (7/10)
なんと10手DRがあっさり2つも見つかってしまいました。
どちらもコーナーがそこまで良くはないのでどちらにしろ12手4a1と比べたら採用には及びませんが、これがもし2QT以下だったらと思うとヒヤヒヤします。
やはり書いた最短EOくらいは全部確認するべきですね。
終わりに
結果について
FMCアドカレ2023の最終試技はなんと20手!
平均記録は 21, 19, 20 = 20.00 でWRタイです!!
(実際にはこれらの試技は連続に行っていないのでPBにはならないのが残念ですが……)
正直、3試技全体的に上手くいきすぎて今年最後どころか今後数年分の運を使い果たしているような気がしますが、FMC一年目のビギナーズラックということで勘弁してください。
今後の課題
今回も色々とミスがあり、改善すべき点の多いソルブでした。
差し当たっての課題は
- EOの書き方(メモ用紙の使い方)
- EO・RZPの手数の基準決め
- RZPの高速探索
などでしょうか。特にEO・RZPについては上級者は「EO≦5 かつ RZP≦5」でほぼ固定しているようなので私もそれに可能な限り合わせたいと思います。
おまけ
私が最初に今回のスクランブルを見たときに思ったのは、「ペアが多くてBB強そう~(小並感)」でした。
年に一度のアドカレですし、せっかくなので時間外でBBにも挑戦してみようと思います。
特に言う事もないので思考過程は省きます。ごめんなさい。
(U B2) // 122 (2/5)
(D L2) // 222 (2/7)
D B U B2 U' B' D' B' R2 @ // 223 (9/16)
U' B $ // 3e3c (2/18)
$ = B2 R' L U2 R L' // 3c (6-2/22)
@ = R2 U L U' R2 U L' U' // finish (8-3/27)
∴ D B U B2 U' B' D' B' U L U' R2 U L' U2 B' R' L U2 R L D' B2 U' R' F2 D (27 moves)
30分くらいでなんか出来ました。
初めてBBで解答を完成させた割には良い線行ってるのではないでしょうか。
ちなみにIFにかけたところ3e3cのインサートとしては正解でしたが、SFにかけると3eのインサートでとんでもない解答が出てきました。
(U *** B2) // 122 (2/5)
(D * L2) // 222 (2/7)
** D B U B2 U' B' D' B' R2 @ // 223 (9/16)
U' B // 3e3c (2/18)
@ = R2 U L U' R2 U L' U' // 3e (8-3/23)
* = E, ** = E2, *** = E' // finish (8-6/25)
FMC Advent Calendar 2023 11日目
はじめに
この記事は FMC Advent Calendar 2023 の11日目の記事です。
昨日はkits_さんによるFMC Advent Calendar 2023 (2) 思考過程でした。
明日はうぃるうぃるさんによるもちろんRouxです。
こんにちは。Shotaです。今日はscramble (2)を解いていきます。よろしくお願いします。
結果
solution: D' F2 U' B L2 R B R' U2 B' D2 R2 F2 D2 F' R2 F B2 R (19 moves)
なんとSub20が出ました! 試技(1)が21手だったので暫定平均は20.00です!!
このソルブは11月25日、大会前最後の練習として行った*1のですが、大会での初試技WRに繫がる良い伏線になったのではと感じています。
思考過程
EO
いつも通り、4手以下のEOを書き出します。以下、見つけた順に
DR
3手EOから順に探索していきます。RZPは基本的に最短EO+2手以内を目安にしています。(今回ならRZP≦5)
①: F* L F2 B2 L2 B R B // DR 2c3, 2c5*3 (8/11)
②: F (F2 B2 R2 L2 B R' B) // DR 2c4 (8/11), 2c4 (9/12)*4
③: L' F L F2 L F2 B2 R U(w)2 L2 B // DR 2c4 (11/14)
F2 B2 R' // DR-2e3c
このEOは良い5手RZPが見つかりませんでした。本来ならここで諦めて別のEOに移るべきですが、6手RZPが"見えて"しまいました。
2e3cはセットアップが容易な可能性が高いので、一応続けてみます。以下、このRZP後
⑤: (L2 U(w)2 B' L F' L) // DR 2c4 (6/12), 4a4 (7/13)
⑥: (F' L2 F' R B' R) // DR 4b3 (6/12), 4b5 (7/13)
DQ=14が1つ見つかりました。①は3QTですが④は2QTなので、④が第一候補になります。
このEO(のノーマルRZP)はこのくらいでいいでしょう。
続いて、普段ならノーマルの4手EOを見ていくのですが、今回発見した U D2 L2 D, D U2 B2 U はいずれも今見た3手EOにE2のスライスインサートを施したものになっています。
D U2 B2 U = E2 D' F2 U y2
ところでこのE2をした時点(つまりノーマルのスクランブル直後)でのE層のエッジを見てみると、HTR的に同等なエッジ(HTR後に同スライス上に来るエッジ)が対角に配置されており、E2をしても対面色同士が交換するだけになっています。
つまり、これらの4手EOは先ほどの3手EOと、少なくともHTRを作るまでは全く同じ形なのです。
⑦: (R F L2 F2 R2 B2 L B' L) // DR 2c3 (9/12), 4a3 (10/13)
⑧: (R) U2 B L2 R B R // DR 2c3 (7-1/9)
例によってDR-2e3cなのですぐにNISSも試します。
DQ=12が一つ見つかりました。しかも2c3は3QTの中でも全てのQT間のHTが最少1回で済む最も簡単なパターンです。
この辺りで27分くらいなので、十中八九採用DRはこの⑧で決定でしょう。9手以下のDR自体そんなに見つかるわけでもないので、もうここでDR探索を切り上げても良いのですが、せっかく時間をオーバーして書いた4手EOを見向きもせず捨てるのは惜しいので、30分になるまでは4手EOを確認します。
前回はこの確認で30分を5分も超えてしまったので、今回は絶対に30分で諦める心積もりです。
⑨: F U' B2 U' L2 U' F2 D B // DR 2c3 (9/13)
はい。なんの成果も上げられませんでした。
この最後の時間潰しEOチェックで採用に至るDRを見つけた試しが無いのですが、やはり変な悪あがきはしないべきなのでしょうか。
採用するDRを⑧で確定し、HTR探索に入ります。
D' F2 U' // EO (3/3)
(R) B L2 R B R // DR (6/9)
HTR
まずノーマル側から探索……と思いましたがこちら側だとDRトリガーの最後の1手をRとR'のどちらにしても、QTを減らすにはHT(180°回転)を1手以上(U(w)2など)挟む必要があります。
- DRの最後の1手
- その次のHT
でHTRへの道が最初の時点で少なくとも4つに分岐しており、ちょっと面倒くさいので一旦これは置いておいて、インバース側から探索します。
幸いなことにインバースだとDR後1手で2QTになり、更に1HT進めるだけで4手トリガーにセットアップできます。
このトリガーは [F' Lw2 U2 B] でも可能ですが、ひとまずブロックを保存しそうな [F' L2 U2 B] を選ぶと、なんと+1手で2eのスケルトンになりました!
(このスケルトンを確認した上で、戻って [F' Lw2 U2 B] のパターンも試しましたが、これを超えるものはできなさそうだったので捨てました。)
16手2e+Esliceはかなり前途有望です。実際インサートしてみると、すぐに6-3手が見つかります。さらに遡ると、同じく3手のインサートが2つ見つかりました。
2c3で10手のスライス残しはほぼoptimalでしょう。スライスインサートを後回しにして事故っても仕方がないので、この場でスライスインサートをして解答を完成させます。まずは最初に見つけた [1] によるLeave Sliceから。
DR⑧後、
[S] = S, [S2] = S2 // finish (6-5/20)
結構ちゃんと探したのですが、+1手しか見つかりません。(Slicy Finderによるとこれでoptimalのようです)
次に [2] を試します。
[S] = S, [S2] = S2 // finish (6-5/20)
これもダメ。(SFによるとこれでoptimalです)
インサートの仕方もほとんど [1] と一緒ですね。なんかそうなりそうな気がしてました。
次。
出ました。0手。(SFによると以下略)
今考えたらFとBの同時回しが残る[3] のインサートから試すべきでしたが、全く気付いていませんでした。
私はインサートを探す時、先ほどの [1] ~ [3] のように手順を列挙するのではなく、以下のように ①どこに ②何手の インサートがあるかのみをメモしているのでこういうことが起こるのだと思います。

スライスインサートでキャンセルできる可能性があるときはそれもメモしておく、あるいは最低限そう意識しておくべきだという学びを得ました。
さて、19手の解答ができたものの、インサートとスライスインサートを非常に念入りに探したため、かなりの時間を費やしてしまいました。この時点で50分程度経過していたと思います。
2c3で10手はかなりoptimalみが高いですが、一応残り時間で別のHTRも探していきます。
前述した通り、ノーマルから直接(NISSせずに)HTRを作るのは気が乗らない(←おい)のでインバースでQTを減らしてからノーマルでHTRトリガーを使うことを考えます。
➊のHTRは既に最短の3手でQTを2減らせているので、その直後でNISSしてみると、キャンセル含めて5手でHTRになりました。しかもそこから+4手でスライス残し!
残り時間も少ないので何も考えずに急ぎスライスインサートをします。
残念! +1手しかありません!
もう残り3分くらいなので、今のでもさっきのでもどっちでも良いですが解答を書き下して終わりにします。
……と言いつつメモを俯瞰したら気付きましたが、これどっちも同じ解答ですね。
これだけ短い解だと、途中でNISSをしても結局逆側から同じ解をなぞる事になってしまうのは必然な気もします。
せっかくならノーマルから3QTで直接HTR、あるいはインバースで1QT→ノーマルで2QTのパターンをやれば良かったな、などと考えながらペンを走らせ、解答完了です。
清書は以下の通りです。
(R') // DR-2e3c (1/4)
B L2 R B R' // DR 2c3 (5/9)
(F $ L2 F) U2 B' // HTR (5/14)
D2 R2 B2 $ U2 // 2E2E (4/18)
$ = S2 // finish (4-3/19)
∴ D' F2 U' B L2 R B R' U2 B' D2 R2 F2 D2 F' R2 F B2 R (19 moves)
終わりに
結果について
最後に何かぼやいていましたが、普通にこれでDR後(なんならEO後も)optimal finishだったようです。
唯一見つけた9手以下のDRが10手で解決可能という割とラッキーな回でしたが、しっかりその10手を導出できたのは良かったと思います。
冒頭でも述べましたがこれでmo2 = 20.00、普段と比べるとだいぶ上振れしているので、このまま3試技目もいつも通りくらいで良いので落ち着いてmeanSubNRを目指したいです。
次回へ続く
*1:※この記事自体は大会後に書いています
*2:実際にはあと4手EOが6つ存在します。 ( L2 D' F2 U, B2 D' F2 U, L2 U' R2 D, B2 U' R2 D, (R' B U2 F), (R' F R2 B) )見落としすぎですね。特に最初の4つに関しては、3手EOの最初にL2やB2をしても変わらないというのを完全に失念していました
*3:前者がF*をF, 後者がF*をF'にしたもの
*4:前者がDRトリガーをB R' B, 後者がU2 B R' Bにしたもの
*5:DRまでの手数+DR後コーナーを揃えるのに必要な90°回転の数。DR Quotient, DR指数の略。私が個人的に使っている用語であり、一般的な名称ではないはずなので悪しからず。
*6:複号は両方F2、又は両方Fw2
FMC Advent Calendar 2023 4日目
はじめに
この記事は FMC Advent Calendar 2023 の4日目の記事です。
昨日はkits_さんによるFMC Advent Calendar 2023 (1) 思考過程でした。
明日は凛さんのRZPは5手以内です。
初めまして。ブログ初投稿のShotaと申します。BLDとFMCを主に専攻しています。(BLDはほぼ休学中ですが……)
今日はFMC Advent Calendar 2023のscramble (1)を解いて、思考過程をまとめてみます。
結果
まずは結果から。最近*1はover25も多かったので、かなり上手くいった方です。
solution: R2 D F L U R2 U2 D2 R' U R B2 L2 D2 F2 U F2 D' F2 R2 B (21 moves)
注意事項
私のFMCの記事では、幾つか独自の(一般的でない)記号を用います。予めご了承ください。
※X, Yは任意の回転記号
※EOやDR, HTRトリガーの最後の1手は基本的にX, X'の両方考えられますが、書き出す際はX*を省略してXと書いています
思考過程
全体の流れ
解法はDRを用います。基本的なタイムスケジュールは以下の通りです。
理想はこの通りに進めることですが、全く良いものが見つからなかったり、他に良いものが見つかる見込みがある場合は、各ステップ締め切りを5分程度延長します。
逆に、早々に良いものが見つかりこれ以上探索しても改善の見込みが無い場合は、その時点で切り上げてoptimal finishに全力を注いだり、早めに解答を完成させた後にまた戻ってくることもあります。
EO
まずキューブを2つ使ってノーマルとインバースのスクランブルをし、EOを書き出します。基本的には4手以下のEOのみです。
DR
NISS無しの4手EOから順に、さっそくDRを探していきます。
①: (R B2 L F2 U2 R' U(w)2 L2 F) // DR 2c3 (9/13)
②: (R B2 L F2 R' L F2 L F) // DR 2c3 (9/13)
③: U2 D2 R L' # D2 L B // DR 2c3 (7/11)
既にDR-4e4cになっているため、素直にDRを作ります。③は私が採用基準の1つにしている、「『DRまでの手数+DR後コーナーを揃えるのに必要な90°回転の数』(以下DQ)が14以下である」を満たすため、他になければ採用する可能性が高いです。
なお、③の # にはM2を+0手でインサートすることも可能ですが、HTR的に同等なエッジ(HTR後に同スライス上に来るエッジ)が交換するだけなので、試すとしてもHTRを作った後になります。
他の+2手以下のRZPも見ましたが短いDRを作れそうなものが見当たらないため、次のEOへ。
U L U D' L2 B2 R // DR 2c4 (7/11)
あまり良いのが見つかりませんでした。インバースのRZPを探す前に、途中まで一致しているもう一つの4手EOを探索します。
⑤: L' D' U2 L2 F2 L' U // DR 4a3 (7/11)
⑥: L U R2 U2 D2 R' U R // DR 4b2 (8/12), 4b4 (9/13)
⑦: L (U2 R2 U2 L' D' L) // DR 4a3 (7/11)
⑧: L (B(w)2 R2 U' L2 D2 R' D' R) // DR 4a4 (9-1/12)
色々と見つかりました。特にDR-2e3cは簡単なセットアップが見つかりやすいので、無条件でRZP後のスイッチも試みるようにしています。
前述の条件、DQ ≦14を満たすDRが新たに3つ見つかりました。ここで2つ目の条件「DQが等しければQTの値が少ないものを優先する*4」により、2QTである⑥が第一候補になります。
続いてこれらのNISS EOのインバース側を探索します。
……が良さげなRZPは見つからず。この辺りで30分目前でした。一応30分になるまでは申し訳程度に書いておいた5手EOも探索します。
R B2 U' F2 U D2 L // DR 2c4 (7/12)
⑩: D' F D2 L' B' // EO
R D' L2 U' D L2 U' R // DR 2c4 (8/13)
⑪: D' F L' D2 B' // EO
L (F2 U* F2 B2 R(w)2 D2 L) // DR 2c3, 2c3*5 (8/13)
HTR~Leave Slice
ここからは50分くらいまでひたすらHTRを作ります。ただし、ブロックが多くHTRから容易に良さげなスケルトンを作れそうだったらその場でスケルトンを作り、それが2e(+E slice), 3e, 2e2eであれば簡単にインサートしてスライス残しまで作ります。
以下DR⑥後、
➋: (R2 L2 U' F2 D) // HTR (5/17)
(R2 D2 ^ L2) // 2e2e3E (3/20)
^ = D2 B2 L2 B2 D2 L2 B2 L2 // 3E (8-4/24)
既にDR時点でHTR-6e4cになっているので、ノーマル・インバース両方で適当にセットアップして3手トリガーに持ち込み、まずHTR2個完成です。
➋は良い感じにブロックがあるので適当にLeave Sliceまで終わらせて保険加入します。
それでは別のHTRを色々試していきます。まずは初見で良いのが作れなかったノーマルから。
➍: U2 B2 L2 F2 B2 U' L2 D // HTR (8/20)
F2 D2 L2 F2 U2 R2 // 3e3E (6/26)
既に24手の保険があるため、それを超えた/超えそうなものは容赦なく捨てていきます。
似たような手数のHTRばかり見つかってつまらないので、一旦インバースに移ります。
(実は➌と➎は L2 と F2 R2 L2 B2 という可換な2手順を交換しただけの全く同じHTRですが、この時は気付いていませんでした。)
(R2 F2 D2 ^ ) // 2e4E (3/20)
^ = D2 F2 U2 F2 D2 B2 // E-slice (6-4/22)
➋と同じ17手でこれまた良い雰囲気のHTRができました。スケルトン後そのまま6手2e2e手順をすると22手のスライス残しです。
この辺で50分を過ぎたので、採用するスケルトンはこれに決定し、ちゃんと遡って別のインサートも探します。すると……
L U R2 U2 D2 R' U R // DR (8/12)
(B2 R2 F2 U L2 D) // HTR (6-1/17)
(@ R2 F2 D2) // 2e4E (3/20)
@ = D2 B2 U2 L2 B2 D2 F2 R2 // E-slice (8-7/21)
なんと8-7手!! 実はさっきのスケルトン直後の時点で
Slice Insertion
最後にサクッとスライスインサートをして解答を完成させます。ただし、もしこのとき+2手以上かかる場合は、先の22手の方で+0手が無いかどうか確認しないといけないのでまだ安心はできません。
さて、ここまでの解答をノーマルで書き下し、スライスインサートを挿れたいところだけ書き抜くと、
ここでは詳しいやり方は省きます*6が、U' から外側を回し、U2まで戻ってくるとE層が既に揃っています。従ってB2とL2の間にはEを挿れる必要があることが分かり、他のU/D回転の様子を見てみると、0手インサートになることが自明に分かります。超ラッキーですね。
# = w // finish (0/21)
以上で解答は完成です。まとめて清書すると以下のようになります。
L // DR-2e3c (1/5)
U R2 U2 D2 R' U R // DR 4b2 (7/12)
(R2 F2 U # L2 D #) // HTR (5/17)
(@ R2 F2 D2) // 2e4E (3/20)
@ = D2 # B2 U2 # L2 B2 D2 F2 R2 // 3E (8-7/21)
# = w // finish (0/21)
∴ R2 D F L U R2 U2 D2 R' U R B2 L2 D2 F2 U F2 D' F2 R2 B (21 moves)
終わりに
試技について
今回はDR後無事にoptimal解を導くことができました。私が時間内に発見した①~⑪のDRの中ではこのDRでの21手finishが最も手数の少ない解だそうです!
また、私の採用したEOだとEO後のoptimal解ですら20手finishということもあり、かなり良いソルブをできたのではないでしょうか。
最近はHTRをとにかくたくさん作るようにしていますが、なかなか上手くいっていなかったので少しばかり自信を取り戻す試技となりました。
今後の課題
「FMCの思考過程を文字に起こして人に説明する」という事を初めてやってみて気付いたことは、自分のソルブの曖昧さです。
ある程度分かりやすいように論理立てた解説をするよう心掛けましたが、EOを見る順序やRZP手数の基準、ステップ毎のタイムマネジメントや解答書き下しまでの流れなど自分の中でも未だに曖昧でうまく説明できない部分が浮き彫りになりました。
技術面でも、例えば今回は➌と➎のように無駄に同じHTRを作ってしまった代わりに ~ U (~ U)のようなNISS HTR、QTを敢えて増やして4QTで解くパターンなど試せなかったHTRが数多くあり、探すべきものをより明確な方針を持って効率よく探索しないとDR後optimal付近を安定させるにはとても困難がありそうです。
1時間という限られた時間の中で、予め決められるような事柄で迷っている暇はありません。人に伝える前に、まず自分の中でやり方を一つ一つ整理して明確にする必要性を感じさせられました。
*1:この試技、及びこの解説は11月中旬に行っており、この記事での「最近」とはその頃の事です
*2:実際には L' D (B2 D) という4手EOも存在しますが、見落としていました
*3:X Y' X 又は X' Y X。X Y X や X' Y' X は別物なので注意
*4:この条件はあくまでHTR初心者の私が主観で決めたものであり、finish力がついてくれば真逆にする可能性すらあります。また、真逆にはしないにしてもQT間に必要なHTの数など、DRの状態を見て判断できる様々な情報を加味した別の指標を作る可能性は高いです
*5:それぞれU*をU, U'にしたパターン
*6:気になる方、スライスインサートに困っている方は以下の私の配信のアーカイブを参照してください。スライスインサートの話 - Shota (@MegaDBL) - TwitCasting